Hanako世代が読んできた少女漫画
〜ベルばら、エースから、のだめまで〜
日本は少子高齢社会へとひた走っている。男女とも独身者は
増え、合計特殊出生率も下げ止まらない――そんなニッポン社会
の変容に対して責任の一翼を担うのは、30代、40代の女性たち、
いわゆる元祖Hanako世代の女性たちだ。ちょうどこの世代
は名作と名高い少女漫画を読んで育った。それらの作品を、男女
の関係性から読み解いていまのニッポン社会の変容と関わりがある
のか、見ていきたい。
(Part1) 漫画の話に入る前に、少々長い説明をしたいと思う。
「男と女の間には深くて暗いかわがある」と唄ったのは、長谷川
きよしだったが、暗いかどうかは別として、Hanako世代の
オンナと、同世代のオトコとの間には、くっきりはっきりとした溝
がある――。
筆者がこう断言できるのは、Hanako世代の女性たちについて、
週刊誌「読売ウイークリー」で集中してその実像に迫ろうとし、同時に、
同世代の男性たちにも目を向けてきたからだ。
Hanako世代というのは、高度成長期とともに育ち、社会人に
なったころにバブル経済を経験してグルメや旅行、ブランドに囲まれて
青春時代を謳歌した――とされる女性たち。
1960年代生まれがだいたいそうだ。
筆者もその一人だが、自分と周囲を見渡せば、個人差はあるだろう
が、”時代の空気”が確かにあった。
財団法人「家計経済研究所」が10年以上継続する、Hanako世代
の女性1500人を対象にした唯一の本格パネル調査、読売ウイークリーが
「結婚」「すれ違う男女」「セックスレス」などのテーマで行う各種調査
と当事者たちへのインタビューetc――。
これらから明らかになってきたのが、前述の「オトコとオンナの溝」。
さらに、戦後のニッポン社会は80年代半ば頃に大きなギアチェンジをし、
それ以前と以降で価値観は大きく変わったらしいということだ。
★溝は80年代に深まった
そこで、オトコとオンナの溝がどのように深まったのか、本当に80年代
を境に価値観の変化は見られるのか、
読売ウイークリー(2005年4月10日号)の特集「相談男が増殖中」で、雑誌
メディアから読み解いてみた。
すると、どうだろう。80年代以降、どんどん女性は積極的になり、一方の
男性は弱体化していく傾向が歴然と現れていたのだ。その際、作成した
「こうしてギャップは深まった」年表(別表)を見て欲しい。
たとえば、80年代、JJなど、読者参加型の女性誌は一般的になった。
アンアンは84年4月6日号でSEXを大特集し、ごく普通の女性たちが顔写真
付きで告白して世間を驚かせた。
国内初の男性向け週刊誌「平凡パンチ」創刊号(64年)に登場した女性は
女優や銀座のバーで働く女性たちに限られていた。
20年の差はなんと大きいことか。
何が、80年代のオンナたちの快進撃につながるのか。
少女漫画を読んで育った筆者には、その一因として同時代の少女漫画が
Hanakoたちの精神構造に大きく影響しているとしか思えない。
何しろ、同世代の漫画好きと漫画の話題になると、30年以上前に読んだ作品
であろうと、記憶があふれ出し、ストーリーはおろか、決めゼリフがすらすらと
口に出ることも少なくないのだ。
★70年代に集中する名作
そこで筆者は、実際に読んで育った少女漫画の中から、当時、同世代に
絶大な人気があったものや、オトコとオンナの関係性において興味深いもの
を選び、年表に書き加えてみた(別表※印)。その結果、70年代前半から
80年代にかけてこれらの作品が集中していることが改めてわかった。
(続く)
こうして男女の溝は深まった (参考年表)
| 社会の出来事 | メディアのトピック ※印以降は、少女漫画の作品タイトル |
| モテたい男の時代 |
| 1964 | 東京オリンピック | 初の男性誌「平凡パンチ」が創刊 |
| 1966 | 「週刊プレイボーイ」が創刊 | |
| 1967 | ※「小さな恋のものがたり」が出版 | |
| 1969 | 東大安田講堂が 落城 |
「8時だヨ!全員集合」が放映開始 |
| 1970 | 大阪で日本万博 | 「あしたのジョー」で力石徹死す |
| 1971 | ※「アラベスク」 | |
| 1972 | 連合赤軍事件 | 性交テクニックを図解した「HOW TO SEX」がベストセラーに ※「ベルサイユのばら」「ポーの一族」 |
| 男女共存の時代 |
| 1973 | 石油ショック | TV「プロポーズ大作戦」が放映開始 ※「エースをねらえ!」 |
| 1974 | ※「トーマの心臓」「デザイナー」 ※「たそがれ時に見つけたの」 |
|
| 1975 | ※「はいからさんが通る」 ※「キャンディ・キャンディ」 |
|
| 1976 | ※「ガラスの仮面」 ※ 「風と木の詩」 |
|
| 1977 | ※「砂の城」 ※「バナナブレッドのプティング」 |
|
| 1978 | ※「綿の国星」 | |
| 1980 | 金属バット事件 | 「とらばーゆ」創刊。「金八先生」など学園ドラマが人気 |
| 1982 | ※「日出処の天子」 | |
| 1985 | いじめ、登校拒否 が社会問題に |
女子高生が出演するテレビ番組「夕やけにゃんにゃん」が話題 |
| 1986 | NTT株売り出し 株高騰 |
男性ファッション誌「メンズノンノ」が創刊 |
| 女性快進撃の時代 |
| 1987 | 女性総合職の第1期生が職場に | 番組中に男性が告白する「ねるとん紅鯨団」放映開始(〜1994年) ※「ぼくの地球を守って」 |
| 1988 | リクルート疑惑 | 「平凡パンチ」休刊。女性誌「Hanako」が創刊 |
| 1989 | 昭和天皇崩御 | 「アンアン」が特集「セックスで、きれいになる」を掲載 ※「pink」 |
| 1991 | バブル崩壊と湾岸戦争 | TVドラマ「東京ラブストーリー」「101回目のプロポーズ」大ヒット |
| 悩める男の時代 |
| 1995 | 阪神大震災、 地下鉄サリン事件 |
ウィンドウズ95が発売。パソコン、インターネットが浸透し始める |
| 1996 | ※「彼氏彼女の事情」 | |
| 1997 | 神戸児童殺傷事件 | 不倫をテーマにしたTVドラマ「失楽園」「不機嫌な果実」が話題 |
| 1999 | 銀行の再編続く | 携帯電話の加入数が500万を突破 ※「NANA] |
| 2001 | ※「のだめカンタービレ」 | |
| 2004 | 新潟県中越地震 | 「電車男」が出版 「冬のソナタ」を始め、韓流大ブーム |
